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2010年11月 アーカイブ

沖縄の民話

沖縄ツアーで人気のある糸満には、こんな民話があります。


昔、糸満に美殿という貧しい若い漁師が住んでいた。


この男、不漁つづきで生活に困り、薩摩の武士で、鮫島という若い役人から生活費を拝借した。


ところが、約束の期限が来ても美殿は返済する金が作れないので、大あわてで家をとび出し、洞窟に身をひそめた。


しかし、美殿は間もなく鮫島に見つかってしまった。


鮫島は文字どおり烈火の如く怒って、美殿の無礼を責めたてた。


「美殿、ぬしは恩借への礼儀を知らんのか。


琉球は守礼の邦というそうじゃが、嘘なのか。


本当は恩知らずの、無礼の邦ということか。


だが、どっち道、今日は勘弁ならんぞ!」


鮫島が大刀の柄を握りしめると、美殿は「ひぇー!」と悲鳴をあげ、いよいよ無礼打ちかと、青くなってふるえた。


しかし、一刻の猶予もならぬ時とて、美殿は必死になって自分の本心を打ち明けた。
た。


「お武家さま、わたしめのひと言もお聞きくだされませ。


家をとびだしてここに隠れましたのは、わたしめが、重々悪うございました。ご無礼はお詫びします。


しかし・・・」


お返しの金も整えないで、貴方さまをお迎えしたら、わたしめはどうなりましたか。


約束を守らぬ不届き者として、ただではすまなかったでしょう。


ご無礼とは知りながら、一時凌ぎに家を飛び出しましたが、足の奴が答めて此処から先は、歩けませんでした、と泣く。


鮫島は美殿の言葉をきき、その態度をじっと見て、美殿に嘘はないと信じた。


「訊くが、金が間に合わなかった訳は?」


美殿は風邪や台風で、長らく漁に出られなかった事情を涙の裡に打ち明けた。

沖縄の民話 2

「美殿、おぬしは、俺が待ったなしに民百姓を手討ちにするような、気短者に見えるか」


「違います、旦那様!旦那様が、どうこうと、滅相もない!


手前は、その御腰の物のことを申しとります。お刀が恐うござります。


大和のお侍さんは、その刀を斬れ斬れとお尻をたたかれとるのとちがいますか」


大和は薩摩のこと。


薩摩の彼方はすべて大大和と呼びました。


美殿は植民地役人の無礼打ちや斬り捨て御免を、的を言い当てています。


「面白いことを申す奴だ。では刀剣を持たぬ琉球には、短期者は居らぬと申すのだな?」


鮫島の言葉はいささか皮肉っぽいです。


「は、さようでございます。琉球の唐手は先手を許しませぬ。意地(怒り)が出たら手を退け、手が出たら意地を退けと教えとります」


と、美殿は胸をはりました。


それは彼の発案ではなく、唐手だけの教訓でもありません。


沖縄の民の気質にまでなった土着の考えで「守礼」の二文字が示す平和の精神です。


美殿の口からすらすら出るのも当然でした。


鮫島はその「意地が出たら・・・」を呪文のように唱えつつ「不滅の言」といい、借金の支払延期は、鮫島の方から「一年待とう、それでいいのかな?」といって辞去しました。


それから数日後、鮫島は公務で鹿児島に帰ることになりました。


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