沖縄の民話
沖縄ツアーで人気のある糸満には、こんな民話があります。
昔、糸満に美殿という貧しい若い漁師が住んでいた。
この男、不漁つづきで生活に困り、薩摩の武士で、鮫島という若い役人から生活費を拝借した。
ところが、約束の期限が来ても美殿は返済する金が作れないので、大あわてで家をとび出し、洞窟に身をひそめた。
しかし、美殿は間もなく鮫島に見つかってしまった。
鮫島は文字どおり烈火の如く怒って、美殿の無礼を責めたてた。
「美殿、ぬしは恩借への礼儀を知らんのか。
琉球は守礼の邦というそうじゃが、嘘なのか。
本当は恩知らずの、無礼の邦ということか。
だが、どっち道、今日は勘弁ならんぞ!」
鮫島が大刀の柄を握りしめると、美殿は「ひぇー!」と悲鳴をあげ、いよいよ無礼打ちかと、青くなってふるえた。
しかし、一刻の猶予もならぬ時とて、美殿は必死になって自分の本心を打ち明けた。
た。
「お武家さま、わたしめのひと言もお聞きくだされませ。
家をとびだしてここに隠れましたのは、わたしめが、重々悪うございました。ご無礼はお詫びします。
しかし・・・」
お返しの金も整えないで、貴方さまをお迎えしたら、わたしめはどうなりましたか。
約束を守らぬ不届き者として、ただではすまなかったでしょう。
ご無礼とは知りながら、一時凌ぎに家を飛び出しましたが、足の奴が答めて此処から先は、歩けませんでした、と泣く。
鮫島は美殿の言葉をきき、その態度をじっと見て、美殿に嘘はないと信じた。
「訊くが、金が間に合わなかった訳は?」
美殿は風邪や台風で、長らく漁に出られなかった事情を涙の裡に打ち明けた。